「ひかりのくに」の想い出

2009年12月15日

イラストレーター 童画 徳治昭
「ひかりのくに」と「ふたり」
僕は年間にたくさんの肖像童画のご注文を受け、制作します。
そのどれも印象深く、忘れられないものですが、ここにエピソードとして残しておきたい想い出のひと組の童画があります。
それは2007年夏の個展中に、いつも来て頂いている女性、Tさんから肖像童画のご注文がありました。2点。大きさや価格などを説明しながら作品の内容を聞いていくうちに、「亡くなった息子の絵を・・・」と聞き、一瞬、思考が停止しました。しかし、プロとして、依頼主の想いを形にするのが僕らの仕事でもあります。。。。話を続けました。
その後、写真が送られて来て、いつものように取材を始めます。
好きな色や動物、好物など・・・自分の中にためらいがあったのは事実です。そして、息子への想いを綴った日記を読ませて頂きました。。。
そこには愛情と、親としての後悔などが語られていてそれが痛いほど伝わってきました。
今まで亡くなったペットの依頼はありました。人もありましたが、老人で、人生をまっとうして生きた方達でした。。子供というのは、ご両親の想いは計り知れませんが、自分に果たして描くことが出きるだろうか?と悩みました。
後日送られて来た写真はうちの仏壇に置き、手を合わせました。
それから数週間、封を切れませんでした。ご注文の場合、3ヶ月の期間を頂くのですが、正直に言うと、ギリギリまで描けませんでした。
ようやく封を開けて写真を見ました。そこには生き生きとして今にも動き出しそうな笑顔のお子さん。。また、ストップしてしまいました。
描けないかもしれない。。。あってはならないことです。
結局、Tさんには少し遅れている・・・と連絡しました。
イメージトレーニング。Tさんの日記を読み、そして、枕の下に写真を置いて寝てみました。苦しみの中から僕が考えた方法は・・・・
イメージを考えず、お子さんを描かず、バックから描き始めました。
そして、お子さんの好きなものを描いていきました。青色、サッカーボール、うさぎ、アイスクリーム、いちご等々。。。
すると、絵にある光を描き込むように、お子さん、りょうちゃんが降りてきてくれました。
イメージとしては、な〜んだ、今まで恥ずかしかったんだ。。。でも、好きなものを並べてようやく顔をみせてくれた。。。そう感じました。
それからあっという間に絵が進み、2枚目はお姉ちゃんと遊んでいます。。。完成したのです。
絶対無理だと思った期日にも間に合いました。。
そして、ふと、直前の個展で展示したくなりました。しかし、今思うと状況から見て、そっとお渡しする方がいいと思うのですが、何故かTさんに展示のお願いをしてしまいました。
快諾頂きました。
初日、ご夫婦で来て頂きました。僕はちょっと意地悪しました。りょうちゃんとの企みです(笑)会場に入ってすぐに見えないところに展示しました。まるでかくれんぼするように。。。突然、その絵が飛び込んでくるような展示です。
ご夫婦も初めて絵を見ます。
結果、とても喜んで頂けました。なにより、ご主人が涙ぐんでおられたのがとても印象的でした。。。ビックリしたのが、好物がアイスクリームだとは聞いていたのですが、イメージでソーダ系を描いたのですが、まさしくそれが好きなのでした。。。
その展覧会は、りょうちゃんの同窓会となりました。たくさんの知り合いがりょうちゃんとの再会を懐かしみ、楽しんでいました。中でも今は立派な青年になっていた同級生がフラリと来て、じっと見ている様子は目頭が熱くなり、こらえるのが大変でした。その子は「ほんま、そのままのイメージや」としみじみと言って、また絵と会話しているようでした。。
この絵にはその同級生たちの想いも盛り込んでいます。りょうちゃんが亡くなってから同級生が千羽鶴を折って、Tさんに届けてくれたそうです。
画面ではわかりませんが、地塗りの段階で折り鶴を削って描き込んであるのです。
アップです。こんな感じで折り鶴たちがりょうちゃんの周りを羽ばたいています。
わかるかな?
イラストレーター 童画 徳治昭
今なお愛されているりょうちゃんは、肉体は亡くとも、たくさんの人々の心の中で、今も生きているんだと感じました。
そして、「ひかりのくに」でとても大切にされ、元気で走り回っていることでしょう。
見る人によってはただの一枚の絵。でも、そこには様々なドラマが詰まっています。それを汲み取り、僕の腕を通して生まれた奇跡に
感謝します。自分はこのために生まれてきたんだと、自分自身の生きる証を見つけられたような・・・そんな気持ちになりました。
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その後、Tさんがりょうちゃんの絵に文章をつけてWebで公開されました。本当の愛がそこにはあります。
すきすき だーいすき
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【追記】また、今回のブログのことを、ご自身のブログで公開されました。
暮らしDiary

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